36協定の上限規制!トラック・ハイヤー運転手の待遇と社会保険の関係
2024年05月29日
36協定(時間外労働)の上限規制がトラック・ハイヤー運転手の待遇に与える影響が焦点となっています。
この規制変更は、運転業界に大きな影を落とす可能性があります。
運転手の労働条件や給与に変化をもたらす一方で、働き方改革における社会保険の適用拡大による社会保険料の負担増は、企業の経営に大きな負荷がかかるでしょう。
本記事では、36協定の変更がトラック・ハイヤー運転手の生活と労働にどのような変化をもたらすのか、くわえて社会保険の動向についても解説します。
目次
1.トラック・ハイヤー運転手の36協定(時間外労働)の上限はどう変わる?
36協定とは、法定労働時間を超えて従業員に残業をさせる場合に締結される、 労働基準法第36条に基づく「労使協定」です。
トラック・ハイヤー運転手における36協定の上限は、2024年4月1日より年960時間に変わります。
厚生労働省の調査によると、2022年度におけるトラック運転手の年間労働時間は2,568時間におよびます。(※大型トラック運転者の場合)
全産業の平均年間労働時間である2,124時間と比較すると、トラック運転手の年間労働時間は444時間も多いのが現実です。
運転業界の課題でもある長時間労働の原因として、労使間で36協定を締結していれば、時間外労働を制限なく行えたことが挙げられます。
1日8時間および1週40時間を超えて労働させる場合や、毎週1回の休日に労働させる場合において、労使協定の締結かつ労働基準監督署への届出が必要になります。
ただし、36協定に上限がなかったことで、限りなく残業可能な状態になっていたのが現実でしょう。
2024年4月に適用された36協定の上限規制により、トラック・ハイヤー運転手の時間外労働は大きく減らされました。
※参照:厚生労働省 建設業・ドライバー・医師の時間外労働の上限規制特設サイト
2.36協定の上限規制でトラック・ハイヤー運転手の労働環境はどう変わる?
36協定の上限規制により、トラック・ハイヤー運転手の労働環境は、より労働者にやさしい環境へと変わります。
36協定の上限とあわせて、改善基準告示も改正されました。
改善基準告示とは「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を指しています。
改善基準告示の改正により、トラック運転手の拘束時間および休息時間は以下のように見直されました。
見直し前 | 見直し後 | |
1年の拘束時間 | 3,516時間 | 原則:3,300時間 |
1か月の拘束時間 | 原則:293時間
最大:320時間 |
原則:284時間
最大:310時間 |
1日の休息時間 | 継続8時間 | 継続11時間を基本として9時間下限 |
※参照:厚生労働省 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
なお、ハイヤー運転手においては、お客様の都合により利用時間が長くなる場合もあることから、拘束時間および休息時間の規制は適用されません。
ただし、ハイヤー運転手の時間外労働は、以下の時間内に収まるように努めます。
1か月 | 45時間 |
1年 | 360時間(※特別な事情がある場合でも年960時間を超えない) |
36協定の上限規制によって、トラック・ハイヤー運転手の労働環境は、より働きやすい環境へと変化していくでしょう。
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3.36協定の上限規制がもたらすメリット・デメリット
36協定の上限規制がもたらすメリット・デメリットを、トラック・ハイヤー運転手と企業側に分けて解説します。
3-1. トラック・ハイヤー運転手のメリット・デメリット
36協定がトラック・ハイヤー運転手にもたらすメリットとしては、残業時間の減少にともないワークバランスの実現につながったり、より安全性の高い業務が可能になったりすることです。
たとえば、睡眠時間を削って残業していた場合では、36協定の上限規制により多くの睡眠時間を確保できます。
睡眠時間を確保することで、集中力や判断力が向上するため、より安全性の高い業務が可能になるでしょう。
また、残業にあてていた時間を趣味や資格取得のために使うことも可能です。
一方、デメリットとしては、これまで960時間以上の労働をしていたドライバーは、給与の減少につながる場合があります。
残業時間が減少することで手当も少なくなるため、結果的に給与も減少するでしょう。
そのため、基本給の高い企業への転職を検討するのもおすすめです。
3-2. 企業側のメリット・デメリット
36協定が企業側にもたらすメリットとしては、従業員の労働時間を把握し管理できることです。
たとえば、従業員の労働時間は、部署ごとで管理されている場合が大半です。
そのため、部署ごとの残業時間や業務量を企業全体で把握することは難しいでしょう。
36協定の上限規制により、企業全体で従業員の労働時間を管理できます。
企業全体で従業員の労働時間を管理することで、突出して残業時間や業務量の多い部署を特定できるでしょう。
残業時間や業務量の多い部署には人員を多く配置して、業務の円滑化をはかることで企業の経営向上も目指せます。
一方、企業側のデメリットとしては、残業時間の減少にともない、より多くの人員が必要になることです。
多くの人員が必要になれば、人件費がかさみます。
その結果、福利厚生や教育訓練などにかける費用も増大するでしょう。
4. 働き方改革(36協定上限規制)と社会保険の関係
働き方改革の前と社会保険の関係は、残業過多により給与が上がることで保険料も比例して高くなることです。
つまり、36協定の上限規制により残業時間が減少する労働者においては、社会保険料の負担が軽減されます。
一方で、残業時間の減少にともない人員の増加を強いられる企業にとっては、社会保険料の負担が大きくなるリスクを背負うことになるでしょう。
企業によっては人員コストの負担増に耐えきれず、業界の統廃合を招く可能性もあります。
そのため、資金のある大企業への転職を検討するのもよいでしょう。
5. まとめ
36協定の上限規制により、トラック・ハイヤー運転手の時間外労働は年960時間に設定されました。
そのため、過重労働はなくなり働きやすい環境へと進化を遂げています。
一方で、36協定の上限規制にともない、小規模企業では人員コストの負担増に耐えきれず、廃業するケースもあるかもしれません。
運転業界への転職を検討している方は、36協定の上限規制による影響が少ない大手の企業を選ぶのが得策でしょう。
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